東大とか有名私立中高一貫校とか苅谷氏の本とか

ここまでのあらすじ1(私による要約なので注意)
buyobuyoさん:
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20070827
東大進学者の家庭の平均年収は1000万円を超えていることは有名な話だ。
私:
http://d.hatena.ne.jp/kmaebashi/20070828#p2(コメント欄)
http://d.hatena.ne.jp/kmaebashi/20070830#p1
東大は国立なんだから本来底辺私立大学よりコストは安いはずでしょ
buyobuyoさん:
こいつは私立中高一貫校も知らんのかm9(^Д^)プギャー

正直、前々回のエントリを書いたとき、私の頭からは私立中高一貫校は割ときれいさっぱり抜けていました。私にとってはかなり縁遠い世界だったので(もちろん「見たこともない」わけはないけどさ)。
で、buyobuyoさんは、東大に入学するにはコストがかかる根拠としてこれを挙げてきたわけだから、「小学校から塾に行くなり家庭教師なり付けて私立中高一貫校に行かないと東大に進むのはかなり難しい(だから経済格差が問題なのだ)」ということでなければいけないはずですが。
セブンアンドワイで取り寄せていた苅谷剛彦さんの「大衆教育社会のゆくえ―学歴主義と平等神話の戦後史」の3章冒頭には「中教審答申の根拠を疑う」という項があって、まさにこの中教審答申の主張が

今、六年制一貫高には、主として大都市圏に住む、一定の収入を保証された家庭の子ども以外は接近することさえもおそらく容易ではないであろう。能力があっても、近づくことのできない学校制度が、長期にわたって有利な条件を保持し続けることは、教育における機会均等の理念にも反することである。

なのですが、この本では、東大に私立高校からの入学者が増えても親の職業構成が変動していないことをもってこれに反論しています。

しかしたとえ、どのような高校を経由してこようと、もともとの出身階層の構成比率自体にはこの間ほとんど大きな変化は生じなかったということである。

したがって、中教審が問題提起した「機会均等の理念に反する」事態は、「一定の収入を保証された家庭の子ども以外は接近することさえも恐らく容易でない」私立の六年制学校の普及によって生じた事態とはいえない。

ていうかbuyobuyoさんこの本読んでるはずだし、定説とまで言ってるし、下記のような引用までしているし。

東大入学を有利にしているのは、「上層ノンマニュアル」の財力だけではない。先の調査で示した20年間に、公立高校から東大へ入学する者の割合は70%から50%に減少した。一方、私立高校の出身者は30%から50%へと増加した。つまり、東大入学者の出身校が教育費の安い公立から高い私立へと移行しても、保護者の職業構成は全く変わっていないのだ。これは、財力以上の文化力、すなわち、眼に見えない「階層」が、そこに存在していたことを示している。

buyobuyoさんは、私が見ている8/27の日記以来、ここに至るまで、「金の話」しかしてないわけですよ。なので私はそれに対し、

・格差が世代を超えて固定することはある。
・そうだとしたら、その原因は何だろう。主な要因はお金じゃないかもしれないよ。

とか、

でも、「格差が世代を超えて固定する」というのが真であるとするなら、それは、「所得の格差が世代を超えて固定する」のではなく「学歴の格差が世代を超えて固定する」要因の方がたぶん大きいと思うんですよ。

とか書いてきたわけです(まあ、ろくなデータも持たずに書いてたのは確かですがね)。

http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20070905#p1

卑怯とか何とか意味不明なブクマがあるが、俺は話の最初から苅谷氏の著作を紹介しているんだけど、それで卑怯とか言われても困る。

卑怯かどうかは知らないけれど、8月中のbuyobuyoさんの主張を見る限り、「苅谷氏の著作」のそれからは結構ベクトルのずれた主張だったと思いますよ。
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20070905#p1

例えば、本書では、高校進学率と家庭の所得水準との影響関係をパス解析*1という手法を利用して分析する潮木守一の研究*2を紹介している。
パス解析により、様々なファクターの持つ影響力は-1〜1の数値に数値化される。0であれば全く影響力が無く、+1に近ければ促進する影響力が強く、-1に近ければ抑制する影響力が強いとされる。パス解析の結果によると、直接・間接に親の所得が高校進学に及ぼす影響力は0.446、本人の学力が及ぼす影響力は0.491となり、親の所得は本人の学力に匹敵するほどの影響力があることがわかる。財力は無視できるファクターではない。

この部分は、確かにこの本の中で否定的に書かれた主張ではないものの、この潮木さんの研究はかなり古い(buyobuyoさんとこの注釈によれば1971年?)の「高校進学率」に対する研究ですし。

buyobuyoさんが何を根拠に何を主張したいのか、どうもよくわからんです。

odzさん:
http://d.hatena.ne.jp/odz/20070908/1189262309#tb

今回の例でいうと、それぞれたとえてみれば

  • 学力の向上にはお金がかかる
  • 親の学力が世帯所得と子供の学力に影響を与えるから、結果として世帯所得と学力間に相関が見られる
  • 名門私立などに通うと周りがみんな一流大学に行こうとがんばっているから、影響されて学習に対するモチベーションが高くなる。高いモチベーションが高い学力を生みだす。

とそんな感じ。3つ目のやつは kmaebashi さん や 猪股さん が主張されてことに近いと思う。id:buyobuyo さんは「精神論」と切って捨てるけど、モチベーション、士気といったものは結構重要な要素だよね。

ええと、私は確かに進学校でのモチベーションの話もしましたけど、それは出身高校の話が出てきたからで、私の元の主張は
http://d.hatena.ne.jp/kmaebashi/20070830#p1

私が挙げた「ネガティブな貧乏人のイメージ」のような親じゃ、そもそも子どもに本を読ませたりしなさそうだし、勉強の面白さを伝えることもできなさそうです。家に本棚がないとすればこれはそれこそ決定的な格差ですし、小学生の頃からの環境の差ですから、仮に大学に入る時点でふんだんに奨学金がもらえるとなっても、それだけの学力も、そんな気もない、ということになっていそうです。

みたいな意味で、経済面よりも大きな格差がついてるんじゃない? ということです。

東大生の親の年収が1千万円を超えていて〜といった、経済面でも学力面でもトップレベルのほうの話は、正直、どうでもいいんじゃないかなあ、と思いますし。